いま、私は生後2ヶ月の娘の育児に奮闘している。
去年の今頃、私は仕事をしていた。
すごく忙しかったけど、やりがいもあって充実していた。
だけど私は、やりがいよりも仕事の充実よりも、何より子どもが欲しかった。
繁忙期が落ち着いた頃、妊娠が分かった。
嬉しくてたまらなかった。
お腹の赤ちゃんのためなら、何だって出来ると思った。
妊娠と同時に、卵巣に腫れがあることが分かった。
絶対安静が必要で、休職せざるを得なくなった。
安静生活が一ヶ月を過ぎる頃、ずっと一人で社会から切り離された気がした。
お腹に宝物がいるのに、なぜか孤独だった。
そのときの私は、仕事に行きたかった。
卵巣の腫れがおさまり、妊娠経過も順調だった。
私は職場復帰することを決めた。
毎日、混雑する電車で通勤した。
赤ちゃんのことが心配で、そんな混雑する電車には乗りたくなかった。
仕事はとても楽しかった。
通勤は辛かったのに、産休に入ることが寂しいと感じた。
産休に入る頃には、お腹が大きくなっていた。
真ん中に線ができて、お臍が出て、変な見た目だったけど、自分のお腹が可愛いと思った。
あっという間に臨月になった。
早く赤ちゃんに会いたかった。
「待ってるよ、早く出ておいで」とお腹に話しかけた。
予定日を2日過ぎて、娘は全身を真っ赤にして産まれてきてくれた。
本当に嬉しくて、「ありがとう。これからよろしくね。」と言って抱きしめた。
産後2日目、病院でシャワー浴が認められた。
お風呂で鏡を見たら、涙が出てきた。
世界一愛しいまんまるのお腹がぺちゃんこになっていたから。
十月十日、ずっと一心同体だった我が子が、離れてしまったような気がした。
今では抱きしめることができるのに。
退院するまで、コロナの影響でパパは娘に会えなかった。
早く可愛い娘をパパに抱いて欲しかったし、パパもそれを心待ちにしていた。
娘は何かを訴えたくて、いつも大きな声で泣いていた。
私の抱っこでは泣き止まないのに、パパの抱っこでは泣き止んだ。
娘をパパに取られたような気持ちになって、悲しい気持ちになった。
娘は娘で、私のものではないのに。
あぁ、いつから私はこんなに欲張りになってしまったんだろう。
思い返してみれば、いつだって私は無い物ねだりをしている。
今だってそう。
早く寝て欲しいと思っていたのに、あなたの寝顔を見ると頬をつつきたくなる。
一人の時間が欲しいのに、離れるとすぐにあなたに会いたくなる。
これからだってきっとそう。
早く一緒にお話ししたい。
早く一緒にショッピングがしたい。
でもきっと、その日が当たり前になる頃、私は復職しているだろう。
何も話せないあなたにおっぱいをあげている、そんな今日の日を恋しく思うんだろう。
私は、無い物ねだりの自分が嫌いだ。
私はこんなに欲深くて都合のいい人間なんだ。
それなのに、あなたはいつだって真っ直ぐに私のことを見て、微笑んでくれる。
あなたがいれば、他に何もいらないよ。
あなたの笑顔を見る度にいつもそう思う。
私は欲張りだけど、これも本心だ。